「だって、恋する子には可愛くあってほしいじゃん」
「まあ、あたしたちの使命みたいなもんよね」
「仲里さんも勉強ばっかじゃつまんないでしょ?」

 三人は明るい表情でそう口々に言った。
 他のお客さんが私たちの横を通ってレジに流れていく。

「恋……」

 カゴを持った手にぎゅっと力を込めて、つぶやいた。
 恋って、私、いま本当に恋してる?

「そうだよ」

 進藤さんが静かにうなずく。

「恋とか、本当は分かんなくて」

 私は首を横に振った。

 イケメンを見れば、私だって心臓がドキドキと鳴る。
 かっこいいと思うし、近付かれたら……好きだと思うかもしれない。
 でも、颯馬くんに対しての感情はきっと恋じゃない。

「彼氏のこと、好きじゃないの? 付き合ってるのに?」
「他の人でもいい、って思ったりしちゃってるってこと?」
「それとも、もう他に好きな人がいるとか?」

 ぐいぐいと神妙な面持ちで三人が私に詰め寄ってくる。

「ううん、実は事情があって付き合ってるだけで、自分が本当に好きかは分からないの。向こうだって、私のこと本気で好きなわけじゃないよ」

 だって、これは私とお姉ちゃんの目標のための計画で……。

「訳ありなんだね。それならさ、うんと可愛くなって、ナンパされまくって、彼氏を嫉妬させよう。恋には嵐が必要なんだ」

 進藤さん、中学生なのに、なんかすごい大人っぽいこと言ってる。
 木村さんも橘さんも、うん、それがいい、みたいに頷いてるし。

「メイクとか私たちが教えるから」
「服も買いに行こ」
「仲里さん変身計画だ! ね?」

 ずいずいっと限界まで寄って、はしゃぐキラキラ三人組。

「う、うん」

 もう後には引けない感じになって、私は戸惑いながらも頷いた。