「……」

 レジの前でメイク道具一式が入ったカゴを手渡されて、私は押し黙ってしまった。
 端から見たら、私は無理矢理買わされようとしているいじめられっ子にしか見えないだろう。

「あ、嫌だったら買わなくていいからね。私たち、そういえば、全然仲里さんの意見聞いてなかった。ごめんね」

「お金とかの問題もあるじゃん、あたしたち、楽しいと突っ走っちゃうことあるんだよね」

「あー、反省だ」

 三人がハッとしたように言って、進藤さんが自分の手にカゴを戻そうとした。

「あの……!」

 慌てて声を出す。三人は驚いて、ピタリと動きを止めた。

「違くて、あの、なんで、ここまでしてくれるのかなって」

 私たちは別に友達ではない。
 友人になろう、と言われたわけでもない。
 でも、いじめでこういうことをしてるわけでもなさそうで……。

 言ってしまったことが怖い。
 黙って買いに行けばよかった。

 別にちゃんとお金は持ってるし、実際、颯馬くんにイメチェンを褒められて、ちょっと自分でも出来るようになりたいって、心の底では思ってたから。

「なんでって……」

 進藤さんがつぶやいて、他の二人と目を見合わせる。