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「Aちゃん、おかえりなさい」

　颯馬くんと学校近くの図書館で、少しだけ勉強をして、電車に乗って家まで帰ってくるとお母さんがキッチンで夕飯を作っていた。
　お肉を焼く良い匂いがしている。

　料理から目を離さずに気配だけで私だって分かるのお母さんはすごいと思う。

「ただいま」

　スクールバッグからお弁当箱を出して、お母さんの横に向かう。

「え？」

　ちらっとこっちを向いて、お母さんは驚いたような顔をした。
　そうだった、忘れてた。
　今日、私には進藤さんたちの魔法がかかってるんだった。

「どうしたの？　化粧してるの？　この髪も」

　わざわざ火を止めて、私の顔を見るお母さん。
　私たち姉妹は本当に地味で真面目だったから、すごくびっくりしたのかも。

「友達がしてくれた」

　心配させたくなくて、進藤さんたちのことを友達と言っておいた。

「じゃあ、やっぱり、あれはAちゃん？」
「え？」

　お母さんは私が化粧をしたこと、別に怒ってなさそう。
　でも、あれってなんだろう？