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 ドキドキした気持ちで校門まで行くと、そこに颯馬くんは立っていた。
 変わらない立ち姿、何かを考えるような憂いの瞳。
 周りからヒソヒソ、キャーキャー言われてるのにまったく気にしてない様子。

 今日もその存在がまぶしい。

「颯馬くん」

 声をかけようか、自然と前を通って気付いてもらおうか、そう悩んだけど、もしかしたら、今日は私ちょっと違うから気付いてもらえないかも、と思って私から声をかけた。

「お、Aちゃん、おつか――」

 笑顔で横を向いた颯馬くんが、私を見て、表情を失った。

「なにそれ」

 その言葉で私も固まる。冷や汗が出てきた。

 ――すごく見てるし、もしかして、怒ってる? そんな格好するな、とか言われ……

「すごい可愛いじゃん。いや、いつも可愛いけど、どうしたの?」

 満面の笑みでふわりと巻いた髪を一房手に取られて、ドキリとする。

「クラスの子が勝手に……」

 たぶん、私のことおもちゃだと思ってるけど、やってくれたんだよね。
 進藤さんたち、私とは住む世界が違うようなキラキラした人たちだけど、悪い人たちじゃないのかも。彼女たちは頭もいいし。

「やってくれた」

 恥ずかしくて、視線を逸らしながら付け足す。
 颯馬くん、いつまで私の髪、見てるんだろう。
 そう思っていたら

「そっか。Aちゃん、一人じゃないんだ」

 ニコッと優しく笑った瞳と視線が合った。
 まるで私がいつも教室で一人だと思ってて心配してたみたい。
 間違ってないけど。

「私にだって、友達くらい……」