昔もお姉ちゃんに引き上げてもらって登ったことがあったけど、登ってみたら、やっぱり、そんなに昔みたいに恐竜は大きく感じられなかった。

 前に見た景色とちょっと違う。
 私たちは日々、成長してるんだ。
 ううん、これからは私だけが……。

「小学校三年のとき、Aちゃんが高熱出して入院したことがあったじゃん? 肺炎みたいになっちゃって、呼んでも全然反応しなくて、救急車を呼ぶことになって……、私、そのとき、自分の所為だってお母さんに泣きついたんだよね」

 お姉ちゃん、また私って言ってる。
 思い出話をするときだけは、私なのかな?
 
 ティラノサウルスの上で二人きり、冒険者たちは過去を語る。

「本当は全然そんなことないんだけど、当時は本当に自分の所為だと思ってた。理由とかはなしに。自分の半分が失われるみたいだった」

 そんな話、初めて聞いた。
 たしかに私は小三のときに入院するほどの大きな病気にかかった。
 あとで聞いた話だと意識が戻らないときもあったみたい。
 それでも、退院して顔を合わせたお姉ちゃんは、いつも通り笑ってたし、そんな風に思われてたなんて気付かなかった。

 けど、自分の半分が失われるって気持ち、いまなら分かる。
 ぽっかりと胸に大きな穴が空いたような、自分の右半身だけがなくなってしまったみたいな、そんな重たい感じ。

「分かるよ、その気持ち」
「そうだね、ごめん」

 お姉ちゃんが自ら命を絶った理由、それが分かっていないのに、どうしてお姉ちゃんは謝るんだろう。本当に覚えてないんだよね?

 理由が聞けたら、どんなに救われるか。
 ううん、きっと救われる、よね?