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「お姉ちゃん、好み変わったの?」
「んー、なんだろう、思ってたのと違った、みたいな」

 このいまの見た目で博物館って似合わないな、と思ってたけど、中身の好みも変わったみたい。博物館の展示はあっさり見終わっちゃって、お姉ちゃんは嬉しそうでもなんでもなかった。

 前のお姉ちゃんは何でも資料になるとか言って、目をキラキラさせてたんだけど、いまキラキラしてるのは顔面とオーラだもんね。

「そういえば、小学校の低学年のとき、お父さんによく連れていってもらった公園あるじゃん?」

 突然、足を止めて、お姉ちゃんが思い出したように言った。
 急にどうしたのだろうと、思う。

「交通公園?」

 たしかに私の記憶の中にも、その公園は存在してる。
 何度もお父さんに車で連れていってもらったっけ。

「そう、あそこで自転車乗る練習したよね。それに、いっつもAちゃん、恐竜の遊具、怖がってて」

 クスクスと笑って細められた目が私を見る。

「だって、大きいし、顔が怖いんだもん」

 私たちは同じくらい自転車に乗れなかったけど、恐竜だけは私だけが怖がっていた。
 お姉ちゃんは恐竜の背中につけられた網をどんどん登っていって、天辺で片腕を上げたときにはまるで勇者か、新たな宝を見つけた冒険者みたいだった。

「あれって、まだあるのかな?」
「え?」

 お姉ちゃんはまた突拍子もないことを考えている気がする。

「行ってみよう」

 ほら、始まった。自由人すぎる。
 お姉ちゃんは私と手を繋いだまま、「見てみたいんだ」と言った。