「どこ?」

 私の反応はまるで気にしてないみたいにお姉ちゃんが言う。

「レトロ博物館」

 これは嘘じゃない。お姉ちゃんは前から行きたいって、本当に言っていた。
 モダンな雰囲気を楽しめるとか、明治とかに流行った服が見られるとか、そういう大人しい感じの場所。

「あー、博物館ね。Aちゃんはいいの?」

 思い出したような顔のお姉ちゃん。

「私は別に行きたいところがないから」

 私はどこでもいいんだ。
 お姉ちゃんと少しでも長く過ごせるなら。

「そっか、じゃあ、そこ行こう」

 笑顔でそっと手を握られて、またドキリとした。
 今日のお姉ちゃんは本当に容赦がないし

「で、場所どこだっけ?」

 大事な部分が抜け落ちている。