「わぁ、あの人、かっこいい」

 デート当日、目的地は決めず、とりあえず、一緒に電車に乗り込んでみたけど、お姉ちゃんはやっぱり目立つ。
 駅でも電車の中でも、周りの女子がヒソヒソ、ヒソヒソ。

 これは私のお姉ちゃんなんです! と声を大にして言えたら、どんなに楽か。

 でも、今日のお姉ちゃんは私服で制服と全然雰囲気が違う。
 黒いズボンに白いシャツ、そこにちょっと派手な碧いシャツを着てるんだけど、着方なのか、めちゃくちゃ似合ってると思った。
 だから、私もすごい緊張してる。

「お姉ちゃんと歩くと私まで見られる」

 電車を降りて、ぼやいてしまうのは緊張してる所為。
 わざわざそんなイケメンに転生しなくてもいいじゃん、と思う。

「嫌?」
「嫌とかじゃなくて、だって、私は……不釣り合いだから」

 横から顔を覗き込まれて、ぎゅっとワンピースの裾を両手で握る。
 黒色の地味な色ではあるけど、これでも女子っぽい服を着てきたつもりだった。
 でも、周りの女の子からしたら、私は普通の地味子。

「俺的にAちゃんは普通に可愛いと思うけどな」

 ニコッと笑った視線と目が合う。
 これは身内だから褒めてくれてるだけ、と頭では思うけど、顔がポッと熱くなった。

「お、お姉ちゃん、あそこ行きたいって言ってなかったっけ?」

 顔が見れなくなって、思わず、視線を逸らしながら話題を変える。
 あー、うるさいな、私の心臓。
 お姉ちゃんがイケメンなのが悪い。