「んー、いないかな。私、学校で仲良くなった男の子はいたんだけど、その子にAちゃんの話ばっかりしてたもん」

 ないよね、と思った。
 話してるお姉ちゃんは、あははと笑ってる。

「ちょっと、なにしてるの、恥ずかしいんだけど」

 その話初めて聞いたけど、恥ずかしくて仕方がない。
 シスコンだって思われるやつじゃん、それ。

「それでさ、Aちゃんって、勉強ばっかりしててどっか行きたいとか思ったことないの?」

 突然、話題を変えられて、ちょっと考える。
 行きたい場所?

「ないよ」

 考えてみたけど、最近は外に出るのも嫌だったから、思いつかなかった。
 ぶっきらぼうに答えてしまうのは、その所為。

「じゃあ、デートしよ」
「へ?」

 うつむき気味の私の耳に聞き慣れない言葉が入ってきて、ぱっと顔を上げる。
 いま、お姉ちゃん、デートって言った?

「好きが分からないなら、デートしよう。というか、いろんなところ行こ? 私たち付き合ってるんだし」

 聞き間違いじゃない、嬉しそうにデートって言ってる。

「え? え?」

 たしかに付き合ったけど、全然そんなの心の準備出来てないって。