でも、お姉ちゃんはすぐに

「ううん、なんでもない」

 と笑った。その儚い笑みに心がぎゅっとなる。
 お姉ちゃん、なんて顔してるんだろう。
 これは気が付かなかったフリをしてあげるのがいいのかもしれない。
 きっと、お姉ちゃんも何か思うところがあるんだ。

 ここはスルーして続けよう。

「そう? じゃあ、私が告白するからフってみて」
「分かった」

 私の言葉にお姉ちゃんが真剣な表情で頷く。
 こちらも真剣だ。
 ちゃんと彼の目を見て……

「あの、付き合ってください。よろしくお願いします」

 告白ってこんな感じかな?
 恐る恐るお姉ちゃんの反応を見る。

「ごめんなさい」

 目の前で深々と頭を下げられた。
 正直、なんとも思わなかった。
 全然ショックでもないし、なにも感じない。

「ダメだ、お姉ちゃんじゃ」

 さらっと言ってしまった。
 私のその言葉のほうが攻撃力が高いかもしれない。

「Aちゃん、それさ、先に好きがないとダメなんじゃない?」

 ニコッと笑って、彼が言った。
 お姉ちゃん、よく私の言葉に怒らないなと思う。

「え?」

 それって「好きです、付き合ってください」って言わないとダメってこと? と思ったけど、そういうことじゃないってことがすぐに分かる。

「もうその二人付き合ってるからさ、しばらく付き合ったあとにフラれないと気持ち分からないと思う」

 ノートを指差しながらお姉ちゃんは言った。
 たしかに、付き合った恋人同士の気持ちなんて分からない。

 私が「じゃあ、どうすればいいの?」って言おうとしたときだった。

「だから、Aちゃん、私と付き合おう?」

 お姉ちゃんはさらっと、そんなことを言った。

「へ?」

 やっぱりお姉ちゃん怒ってた?
 これって禁断の恋ってやつ!?