「なにこのメモ、最後に主人公がフラれるとしか書いてない」

 読んでみても一行しか書いてなくて、私が文句を言うとお姉ちゃんは「それはごめん」と謝った。

「何を書こうとしたか記憶消されちゃってて覚えてないんだけど、主人公がフラれるらしいの。で、その後がどうなるかなんだよね」

 顎に手をあてて、名探偵が推理するときみたいな仕草をするお姉ちゃん。
 そのまま学園推理もののドラマに出てもおかしくないよ。

「私、告白したこともフラれたこともないから分かんないよ?」

 人を好きになったことも恋愛もしたことない。
 ちなみに告白されたこともフッたこともない。

 そこで、はたと思いついた。

「お姉ちゃん、ちょっとフってみてくれる?」

 いまのお姉ちゃんだったら、異性からフラれる気持ちを体験出来るんじゃないかって考えて、お姉ちゃんにお願いしてみた。

 それなのに、お姉ちゃんは私の顔を見て、固まっていた。
 それも、少し驚いたような顔をして。

「どうしたの?」

 私、何か悪いこと言ったかな、って心配になる。