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「ちゃんと来てくれたんだ?」

 市の図書館に入って、隅の席に二人で向き合って座る。

「約束したから」

 私が尋ねると、お姉ちゃんはニコッと笑った。
 茶髪は変わらないし、耳にあるピアスも健在で、今日もチャラい。

 うぅ……、顔がいい……。

 両手で顔を覆って、指の隙間から見るのがちょうどいいくらいだ。

 でも、昨日の朝まで、あんなに悲しかったのに、本当にいまは目の前のチャラいお姉ちゃんに救われている。

「どうしたの? 小説は読んだ?」

 少しこちらに身を乗り出すようにして、お姉ちゃんが聞いてきた。

「うん、でもよく分かんなかった」

 顔から手をパッと離して、私は自分のスクールバッグの中からお姉ちゃんのノートを取り出した。

 それを机の上に置くと、お姉ちゃんの手が伸びてきた。

「ここ見て」

 パラパラとめくって、裏表紙の裏側にピンク色の付箋が一枚貼られていた。
まさか、そんなところにメモが貼ってあるとは思わなかった。