「え? あれ彼女?」
「うそ、なにかの間違いでしょ?」
「地味すぎるって」

 コソコソと周りのみんなが話しているのが聞こえる。
 ほんと、全部、聞こえてます。

「ちょ、お姉ちゃん、そんなところで待ってたら目立つって」

 お姉ちゃんのほうに駆け寄って、すっごく小さな声で言う。
 いまのお姉ちゃんはイケメンで背も高いんだから、目立つってこと分かってないのかな?

「だって、ここにいた方が見つけやすいでしょ?」

 私と同じように小さな声で言うお姉ちゃん。
 何を話してるんだろう、って気になってるのかみんなの視線がすごい。

「もっと、端のほうで待つとかさ。道の向かいで待つとか」
「それ同じだと思うけど?」

 私は焦っているのに、お姉ちゃんはクスクス笑ってる。
 まるでこの状況を楽しんでるみたいだ。

「とりあえず、いいから、行こ。見られてるから」

 私は彼の腕を掴んで、目的地なんて決めずに歩き出した。

「きゃあぁああ!」

 突然の黄色い声。
 お姉ちゃんのせいだ。
 笑顔で周囲にぺこっと軽く頭を下げるだけで、この反応。
 いまのお姉ちゃん、末恐ろしい。