「なるほどね。“鈴香”は全部分かってたってわけか」
「え?」

 中川くんのその言葉に読まないという選択肢はなくなってしまった。
 彼の横から、紙を覗き込む。

『仲里鈴音は死んでない✽.。.:*・゚』

 たった一文、そう書いてあった。

「……っ」

 頭が文章の意味を理解した瞬間、止めどなく涙があふれ出した。

鈴音は私の名前。

 お姉ちゃんが、私の知らない間に掘り起こして、これを入れてくれてたんだ。
 物書きとしての私が死んでないって、そう言ってくれようとしてたんだよね。
 

「仲里は言ってたよ。文章力は私のほうが上かもしれないけど、構成とキャラはAちゃんのほうがダントツ魅力がある、文章力なんていくらでも後からなんとかできるから、Aちゃんのほうがすごいんだ、って」

 中川くんの手が一度躊躇って、それからゆっくりと私の背中を優しくさする。
 泣いていいんだよ、と言ってくれてるみたいで

「お姉ちゃん……っ」

 ――そうだったんだね、お姉ちゃん……。

 私はずっと泣き続けた。