「仲里さん、大丈夫?」

 私が久しぶりに学校に行っても、そう尋ねてくる人は誰もいなかった。
 クラスで私はまるで空気みたいな存在。
 私は暗いから、私が壁を作ってしまっているのかもしれない。

 でも、全然大丈夫。
 放課後、お姉ちゃんに会えるって分かってたから。
 元通りの学校生活、とまではいかないけど、落ち着いて授業を受けられた気がする。

「え? 他校の子? 誰待ってるんだろう? イケメンじゃない?」
「芸能人かな? 顔見たことないけど」
「どうする? 声かけてみる?」

 校門に近付いたところで、みんながヒソヒソと話しているのが聞こえた。

いつもならみんな部活に行ったり、さっさと帰ってしまうのに、今日はなんだか遠巻きに人だかりが出来ている。

「あ……」

 みんなの視線を追って、気付く。みんなが見ているのは私のお姉ちゃんだった。

 何か考えているみたいに腕を組んで、そこに立っているお姉ちゃんは春の風を受けて、とても絵になっていた。しばらくそのまま見ていたいような、そんな……。

「あ、Aちゃん」

 彼は私に気付くと、パッと目を輝かせてこちらを見た。
 みんなの視線が一気に私に向く。
 このいつも空気の地味な私に。