「Aちゃん、ここに埋めたこと忘れないでね?」

 家の庭の一郭に空けた穴をシャベルで埋めながら、お姉ちゃんは真剣な表情で私に言った。
 まるで大事なミッションを遂行しているスパイみたいだ。

「忘れないようにするけど、お姉ちゃん、これいつ掘り起こすの?」

 積もっていく土をじっと見て、私はお姉ちゃんに尋ねた。
 普通のタイムカプセルは十年くらいしたら掘り起こすのかな?

「んー、忘れた頃に」

 ぺちぺちと土をシャベルで叩きながら、にへっと笑うお姉ちゃん。

「あははっ、なにそれ意味分かんない」

 タイムカプセルを埋めたあの日、あはは、と二人で笑ったあの日、私たちは小学三年生だった。