キャラクターの見た目と博識なのが人気な彼とは、イラスト仕事がきっかけで気に入られて友達になったのよね。
仕事用(VTuber用アカウント)とプライベート用両方登録している人だ。

共通の友人として私達の事情を知る人なので、彼は彼であの人にいろいろ注意をしてくれていたみたいだね。
それでもこのザマなので、もうどうしようもないのかもしれない。
アル教授の言葉を聞いて、そう思う。


『彼女から別れるって言われたって、大騒ぎだったわよ。連絡が来ないって、悠と繋がりがある人片端から連絡とってるみたい』

「うーわ、迷惑行為…。だって、しょうがないじゃない。私の事公表しないし…それはまぁ、良いんだけど。3ヶ月くらい放置された上に、他の女と楽しくデートしてるとこ目撃しちゃあね。今更どの面下げて連絡取ろうとしてんでしょうかって話ですわ。こちらとしてはもう話す事なんてないよ」

『マジか。何してんだあのクズ。完全に自業自得じゃねぇか』

「アル教授。キャラ壊れかけてるよ」

『おっと。でも、良いの?』


「良い」とは、すぐに言えなかった。
感情はいう事を聞かないけれど、3ヶ月何もなかったのだからそれが答えだとしか思えない。
だから、あのメッセージを送ったのよ。
でもいくら理屈並べ立てて納得させようとしても、何かしら引っかかってて気持ちの整理がつかないでいる。


「良いも何も……私の事を放置しちゃうくらい、夢中になる人が出来たって事でしょう? じゃあ、私はいらないから別れるって言ったまでだよ」

『そうは言っても…』

「それに。今更じゃない? 別れを切り出されて、その時になって慌てるなんて。私の事、バカにし過ぎでしょうが。ムカつくわ」

『……それもそうね。悠がそう決めたのなら、私は何も言わないわ。でも、後悔しないようにね』


後悔…か。
どっちにしても後悔はすると思うな。
後悔するのなら、傷が浅い方が良いに決まっている。
切り捨てるのか。きちんと話をしてキレイに終わらせるのか。
どっちが、ダメージ少ないんだろうか。


「そう…だね。とりあえず、治療に専念しつつ様子見るよ。どうせ納得していないだろうから、話し合う必要はあるだろうけど…今は正直きちんと話し合いができる状態じゃないから、すぐにはムリだなぁ。連絡が来なくなったら、もうそれまでと思うわ」

『そうしなさい。……悠』

「ん?」

()は、悠の味方だよ。それは忘れないで』

「ーーッ」


ここで、素を出すのはズルいと思うよ。アルルカン教授。
一瞬グラッときたじゃないか。
優しい言葉に泣きそうになるわ。


「ん。ありがとう…物凄く、心強いよ」

『いーえ。じゃあこの辺で。仮にホントに別れたとしても、また一緒に遊びましょうよ。私と悠との仲じゃない』

「ふふ。そうだね、また遊ぼうか」

『絶対よ? じゃ、お大事に』


そう言って、通話を終了した。
アル教授と話して、少しスッキリした感がある。
仮に仁と本当に別れたとしても、教授は変わらず遊んでくれると言ってくれた。
それだけでも結構救われたわ。仁科繋がりの人達とは、縁を切らないとね…と思っていたから。