麻倉くんと別れてから1週間。悩みに悩みまくりましたとも。
ただ。
ある程度はあの時麻倉くんが払拭してくれたので、本当ならそこまで悩む必要はなかったのかもしれないけれど。
どうしても、踏ん切りがつかなかったのだ。

仕事が終わって、自問自答を繰り返していく。
何故、踏ん切りがつかないのか。自分でもわからないのよ。
職業がネック…なわけでもない。
いや、多少はあるだろうけれども……思った以上に相手から既読無視からの完全シカトが堪えているのかもしれないな。
でも、入院時に彼はメッセが来たら無視できない性格だと言っていたから…多分遅くなっても返信はしてくれそう……かな。
そこは麻倉くんを信じればいい…とは、思う。
うん。怖いけど。


「多分…私は麻倉くんの事は好きなんだと思う…。けれど、素直に頷けないのは何故なんだろうね?」


お風呂につかりながら、ゆったり考えてみてもよくわかならい。
これかな? と、思う事はあるけれどもしっくりこないのだ。
どうしても周りの………ん?

ふと。
思った以上に、周りの目を気にしすぎているのではないか? と思い至る。
時期的に、仁と別れて割とすぐだし。仕事仲間とかに、白い目で見られたくないのは確かだもの。
……うん。
一度周囲の事は度外視で、自分の気持ちと向き合ってみるのはどうだろうか。
その他も気にしないと不味い事もあるけれど、恋愛ごとに関しては当事者の気持ちも大事だし。

気持ち的には、多分…麻倉くんの事が好きだと思う。
うっかりされた告白が、思いの外嬉しかった。
戸惑いが強かったけれども。
そう。私は、嬉しかったんだよ。告白されて。
だからかな。
あのお出かけから、ずっと麻倉くんの顔や声が離れませんでした。

そういえば……。
仁の時って、どうしたっけ?



仁とは合コンで知り合ったのがきっかけだったっけ。
当時の同僚に強引に誘われたんだよねぇ…。
仁から告白してお付き合い開始したのよね。
その少し前から仁科として活動開始していたから、恋人の事とかはリスナーにオフレコしようと決めたんだったっけ。
それから。別れ話になったのは、お付き合い開始してから3年目の出来事になるね……。

ちゃんと、好きだったんだけどなぁ…。
そう言えば、仁からあまり不満は聞いた事なかったな。
別れの時も言われなかったんだけど……どうなんだろう?
仁も割とはっきり言う人だと思っていたけれど…。


「……わからん。本人に聞けば良いか」


思ったが吉日とばかりに、お風呂を済ませて仁にLINEしてみた。
あ。もうミュートとかもろもろは解除済みなので、遠慮なく連絡は可能なのよね。
あいさつ代わりのスタンプ送れば、ちょっとして返事のスタンプがきた。
よしよし。
この時間は割とゆっくりしていたはずだから、大丈夫かな?
聞いてみれば問題ないときたので、本題を投げてみる。


『聞きたい事が出来たのよ。色々あって過去振り返ってみて、仁から私に関する不満はあまり聞いた事なかった気がしてね。今更だけど何かなかった?』

『ホント今更だな? 特になかったと思うぞ。しいて言えば、時間がなかなか合わなかった事かな』

『なるほど。業種が違うと時間合わせるの大変だもんねぇ……』

『同棲すればまた違ったかもしれないけれどな。でも、同棲もまたリスクがあるから踏み切れなかったんだよなぁ…俺が』


そうなのか。
そういった相談事が上がってなかったから、そういうモノかと思ってたわ。
確かに時間を作るなら、同棲は手っ取り早くはある。
でも、それだけでなくて。相応にデメリットもあるよねぇ…。