配信者さん達は、たぶんお仕事つながりでちょっと会う事があるくらい…の、はず。
それ以外は、あまり接点がないように思うけれど…。


「悠は…仕事に対して、凄く真面目で誠実にこなすでしょ」

「そりゃ仕事だし。報酬もらうのだから、真面目に誠実にこなすのは当然じゃない?」

「その姿勢が評価されているんだよ。真面目に誠実に…は、理想なんだ。残念ながら、誰でも出来る事ではなくて、出来ない人の方が多いと思う。でも、レヴィは可能な限り応えてくれる。打ち合わせも真剣に丁寧に接してくれるから、男女問わずとても好ましく思われているんだよ」

「ぅえ? そうなの?」

「そう。ヤモヤモさんが良い例でしょ? 上も下もみればキリがないけれど、レヴィは上位の人。だから男は勘違いする事もある」


なんと。
趣味とは言え、きちんと報酬を得られるモノであれば仕事と同じだと思っている。
だから、できるだけきちんとしたかっただけなんだが…。
これほど評価をして頂けているとは思わなかった。
……ん?


「勘違い?」

「男って、結構単純にできているんだよ。相手の親切心を好意と勘違いするんだ。何度かそういう場面見た事あるけれど、レヴィの場合は仁科がいたから思いとどまらせていたって事」

「……マジか」

「大マジだねぇ。だから、これからの事を考えたら…ね?」


「ね?」って…。
確かに。
仁科はリスナーにはいってなかったけれど、配信者さん達には、きちんと恋人として紹介はしてくれていたんだよね。
それは牽制も含めてだったのかもしれない。
自分の能天気さに、ちょっとへこんでくる。


「仁科がいても諦めきれなかった自分に軽く引いていたけれど、チャンスが出来たなら…遠慮しない事にしたんだ」

「んー…。そこは、好きでいてくれてありがとう…としか。実際、麻倉くんの好意があったからこそ、助かった部分は大いにあるの。改めて、気にかけてくれてありがとう」

「どういたしまして。まぁ、下心があっただけに、素直にお礼を言われるとちょっと複雑さはある…」


素直に感謝を告げると、苦笑された。
実際、あの時麻倉くんが親身になってくれたから立ち直りは早かったと思うんだ。
それに、告白自体は嬉しく思っているのよ。
でも…。


ふと手元を見て、お酒がなかったから新たに注文する。
日本酒いこうかな。冷で。


「ちょっと急すぎた自覚はあるよ。僕も想定外な事態になっているから」

「そうなの?」

「そう。きちんと準備して告白するつもりだったんだけど…ね。でも、キミと話してたら、自然と出ちゃったんだ」

「あー……そうだね。デートに誘って、ムーディーに告白してくれそうなイメージではあるね」

「まさに、そのつもりだったよ。悠だって、仁科と別れたばかりで戸惑うだろうからって…待ってるつもりだったんだよ」

「お気遣い、ありがとう。でも、そうだねぇ…嬉しい以前に、戸惑いが強いねぇ…今は」


両想いだった事については、素直に嬉しいんですよ。
入院していたあたりから、ばっちり意識しだしているもんで。
でも、麻倉くんが指摘してくれた通りなんだ。
仁と別れたばかりだろ、と。自分にも戸惑っている最中でもあるのですよ…。
また配信者を彼氏にするのか? 前回の二の前にならないか? という心配もある。
だから、素直に喜べませんて。


「そうだね。でも、悠が好きなのは本当。すぐに返事が欲しいとは言わないから、考えてくれないかな?」

「え?」

「本音を言えば、すぐに良い返事は貰いたいけれど…まだ、悠には時間が必要かなって」

「うん。そのお気遣いは大変ありがたいです」


だって。
まだ誰かと付き合うとか考えてもいなかった。
しかも別れてすぐなんて、周りになんて言われるか…。