え? えっと??


「何をサラッと言ってるの!」

「ん? 僕が、悠の事が好きって事」

「いや、だって! 今までそんな素振り…!」

「仁科と別れるまでは、ね。彼と付き合っている事知っていたから、手を出せないでいただけだよ。彼と別れた今、告白したんだ」


麻倉くんはそう言って、一口。残っているお酒を飲んだ。


「とは言え。こんな居酒屋で告白するつもりはなかったんだけど…するっと出ちゃったから、ゴメンね」

「いや…別に雰囲気重視ではないから、良いんだけど…」

「よかった」

「……えっと。なんで…というか、いつから?」


私も落ち着くために、残ったお酒を一口飲む。
一気にあおりたい衝動に駆られるけど、それやったら速攻酔いが回ると思うからやめておく。
酔っぱらったまま聞くのは、後悔しそうだから。


「いつから…か。良いなと思ったのは、初めて会った時から。そこから惹かれて行った感じだね。仁科の彼女と知ってからも、なかなか諦めきれなかったんだ」

「そんな時から? え、でもそんな素振りは…」

「一応人様の恋人だからね。苦しかったけれど、我慢してた。当時は本当に仲がよさそうだったからね」


どうやら自覚しても、友達以上の好意は見せないようにしていたらしい。
自分に向けられている感情に対してそんなに鈍くはないはずなんだけど…全然気づきませんでした。
ここ最近はもしかして? と、思っていたけれど。


「仁科と別れてからは、遠慮はいらないよね? それに、僕は悠の味方なのは変わりないし」

「…あの時からもう遠慮はしなくなってたのね」

「そう言う事。仁科と別れてすぐだから、どうかな? とも思わなくもなかったけれどね。悠を狙っていた配信者、結構いたから気が気でなくて」

「……待って。情報量多くて、キャパオーバー気味…」


ポンコツと化した私の頭から湯気が出そうなくらい、顔が真っ赤になってる自覚がある。
おしぼりを取って、とりあえず顔を隠してしまえ。


「えーと…。私を狙っていた配信者って……」

「レヴィとしてイラスト担当している男性配信者が、数人。まぁ…僕を含めてだけれどね」

「…にわかには、信じられないよ。特段可愛いところないでしょ、私」

「悠は可愛いよ。外見もそうだけど、内面もね」


可愛らしい所なんて、思い当たらないのだが?
麻倉くんも、その他配信者さん達も。私のどこが可愛いというのでしょうかね?


「あ。信じてないね?」

「…だってねぇ。あざといの、私自身に合わないから…」

「それは…そうだね。悠はどちらかと言えば、キレイ系ではあるし。でも、『可愛い』は『ソレ』だけじゃないでしょう? それに女性の魅力は『可愛らしさ』だけじゃないしね」


と。
麻倉くんは、真剣に諭しだしました。
たぶん、私の自己肯定感が下がっている事に気づいたのかもしれない。
若干卑屈になっているの、わかっているから。


「…まぁ。あんな事があったから自信がなくなっているのは、わかるよ。でも…前にも言ったけれど、本心から言った言葉に関しては否定しないでほしいな」

「……う、ん。そうだね…うん。いっそ開き直ってみる方が、今の私にはちょうど良いかもしれない」

「悠は行き過ぎる事がないと思うから、少しくらいなら僕も賛成かな」

「ふふ。しっかし…陰でモテてたのね、私」


ちょっと、信じられない事ではあるのだけれども。
未だに、私の何が良いのかがわからない。