姉さん…は、きっとあまり参考にはならないと思うのよ。シスコン爆発させて、強硬手段とりそうだから。
その点、麻倉くんは冷静に意見言ってくれそうだしね。


「時間は大丈夫。今日は配信しないから」

「ありがとう。じゃあ、見てみようかな」


メッセージアプリを開いて、連絡着始めたやつから内容を………うわぁ。


「…テンパり具合がわかる内容、だね。うん、何で別れるって言われたかもわかってないね。最初の方は」

「そう、だねぇ。あ、この辺でみんなから怒られたのかな」

「そうだね。ちょうどこの日だね」


それまでは、『なんで?』とか『意味がわからない』といった内容で。
入院していると知ったら『心配』とか『連絡して』とかが続いていた。


「清々しい程の言い訳の嵐。謝罪らしい謝罪がないねぇ」

「そうだね。あっても最初の方で、申し訳程度の『ごめん』だけだね」


うーん。仁ってこんな人だったっけ? って思う程、言い訳ばかりしてるな。
以前は自分に非がある場合は、きちんと謝る人だったけれど。
この届いたメッセージには、その面影がどこにもない。

『連絡しなくてごめん』は最初だけで、『誤解だ』とか『彼女とは何でもないから』とか。『会って話を聞いてほしい』だらけだ。
浮気した男の言い訳べストに入っている内容ばかり。
仁科のアカウントの方は…配信頻度が下がってるものの一応配信はしてるみたい。
ここ最近上がっているのは、コラボしていたものだけだけど。


「うーん。何が誤解なんだろうね。事実だけを見れば…理解しあえる新しい女が表れて、そっちに気持ちが移った。で、多少理解はあるものの、一般職な私への興味が失せたって状況なんだけど。少なくとも私はそう思ってるわ」

「正直、僕もそうとしか…。実際彼から話を聞いても、悠が感じた通りの感想しか持てなかったよ」

「あっちが良いなら、そうと言ってくれれば…ちゃんと話してくれれば、多分…少しは揉めるだろうけれど、納得して別れられたと思うんだけど」

「無関心になってたけど、いざ自分から離れられそうとなったら手放したくなくなって焦ってる…のかもね」


なんだ、それ。
仮にそうだとしたら、随分身勝手な考えだね。


「まぁ、悠の気持ちはわかるから。そんな顔しないで」

「……むぅ」

「悠としてはどうなの? 話し合ったとして、元さやに戻れる?」

「……難しい、かなぁ。状況判断だけなんだけども、流石にこの内容と3ヵ月放置された事実は変わりないからね。だいぶ冷めてるのは確かなの。だから、ムリなんじゃないかな」


正直心が折れているというのもある。
和解したとして、また同じような事が起きるんじゃないかと考えてしまうのよ。
要は信用できなくなっているのよね。
常に疑ってしまうのは、私としてもしんどいわ。


「…もう、無条件で信じたいと思えなくなってるんだよね。疲れたんだと思う。別れる意思は、たぶん変わらないかな」

「そう…仁科もバカな事したよね。こんなに可愛い子を手放すような事をしてさ」

「言うほど可愛くはないと思うよ。外見も、中身も」

「僕は悠の事、真面目に可愛いと思ってるよ。そこは否定してほしくないなぁ」


ぐ……。
さらっとそう言う事言う。流石イケメンだね。
女性の扱いなれてそうだよね、麻倉くんって。


「それ…は、どうも…」

「まだ入院期間、あるんでしょ? 仁科と話すのは退院してからで良いんじゃないかな」

「そうだね。その間に少しでも冷静になってくれれば助かるんだけど…」

「僕の方からも、きちんと考えるように言ってみるよ」

「ごめんね、面倒かけて。お願いします」


そう言えば、麻倉くんは苦笑して私の頭をポン、と撫でる。
思わぬ行動に、そのまま固まってしまった。


「そこは『ごめん』より、『ありがとう』の方が嬉しいな」

「…ぅ。ありがとう…」


だから、どうしてこんな事さらって出来るのさ。
しかも、何か雰囲気甘くない?
電話の時も思ったけれども。
誰にでも、そんな甘い雰囲気出すのかな?


「…麻倉くん。こういうのは……軽率に可愛いと言ったり、こういう事しない方が良いよ。勘違いされるよ?」

「そこは弁えてるから、大丈夫。気のない人にはこういう事はしないよ。基本的に身内以外は」

「それなら……良いけど」


じゃあ、私には良いのか?
と言う疑問は、口にできなかった。正直に答えられても、たぶん…返答に困ると思うから。
だって。あの言い分なら、私に気があるって言っているようなもんじゃない…。
いや、あくまで友達として! 私を励ましてくれているんだよ。
きっと。そうだ。
自惚れちゃダメだ。