絶食期間が開けた後。
姉に持ってきてもらったタブレットで、無理のないようにSNSにアップする為のプレイ日記を書いていると思いもよらない人がお見舞いに来た。


「や。だいぶ元気そうだね。とは言え、結構瘦せたみたいだけど」

「きょ…! えっと、麻倉(あさくら)くん。どうしてここがわかったのかな?」

「ふふ。実は僕もお姉さんと知り合いでね。お姉さんから聞いたんだ」


お見舞いに来た人は、麻倉(あさくら) 遥翔(はると)くん。
アル教授の中の人。
危うくVTuber名を大声でいうところだった。危ない危ない。
何気にプライベートで会うのは初めてなのでは?
実際にあった事はあるのだけれど、仕事がらみの時に数回顔見せした程度かな。基本的にやり取りはメールやDiscordだし。

そんな彼はダークブラウンのサラツヤなストレート、アシンメトリーなワンレンで彼の落ち着いた雰囲気を演出している。
落ち着いた知的なイケメン。これが彼を見た時に抱いた印象で、それはあながち間違いではなかったのよね。



「どんな繋がりがあるのか怖いなぁ…」

「ふふ。僕の友人の彼女さんが、キミのお姉さんだね」

「わお。確かにお付き合いしている人がいるって、聞いていたけれども。まさか麻倉くんのご友人とは」


姉さんは漫画家さんで、そのアシスタントさんのお1人とお付き合いする事になったと。
はにかみながら言っていた事を思い出す。あの時の姉さんは可愛かったな。


「ね。世間は狭いよねぇ」

「うん。驚いた」


くすくすと笑いながら、備え付けの椅子に腰掛ける麻倉くん。
彼は顔面偏差値が高く、身長180cm以上のイケメンさんだ。
足、なっが。
足を組んでもサマになってて、いちいちカッコいい。
仁も180には届かないものの、イケメンの部類には入るけれど、ベクトルが違うかな。
どちらかといえば麻倉くんはキレイ系かな。
仁は体育会系だと思う。


「経過はどう?」

「絶食期間は終わったから、流動食から慣らしてってるとこ。まだご飯あんまり受け付けないから、点滴は取れてないね。平均体重よりだいぶ下回ってるから、増やさなきゃいけないって」

「それは大変だねぇ。今何してたの?」

「撮り貯めしていたプレイ動画を見て、SNS用にマンガに起こしてるとこ」


2~3時間を目途にプレイを録画して、見直しながらマンガに起こしているのよ。
今そのラフ画を描いている最中ね。


「あぁ。レヴィのプレイ日記か。あれ、面白くて好きなんだよね」

「え? 見てくれてるんだ。嬉しいな、ありがとう」

「次のアップ、楽しみにしているけれど無理はしないでね。あ、そうそう。大丈夫ならアイツの近状教えるけれど、どうする?」


仁の近状…ね。
届いてるメッセとか見るよりは、他人から聞いた方がまだダメージ少ない気がする。
一応判断材料にもなりそうだから、聞くだけ聞いてみるのもあり…かな。


「大丈夫かはわからないけれど、そろそろ向き合わないとなって思ってる。ただ…届いてるメッセとか見るのはまだ抵抗があるから、様子を教えてほしいです」

「了解。そうだなぁ…」


時系列としては、私が入院したあたりから。
私の事を知っている親しいVTuberさん達から、「最近レヴィとどんな感じ?」と聞かれた事で自分が私の事を放置している事に気づいたらしい。
で、青くなってLINEを見て事の次第を知ったみたい。
仁科の様子がおかしいから、どうしたのかと聞かれ、正直に答えた結果。大なり小なりお叱りを受けたそうな。
アル教授から、私が3ヵ月程放置されてた事を本人から聞いたと言う説明を受け、周りにいた人達に詰められたら認めたそうな。


「それはそれは…」

「みんな、悠…レヴィの事、結構気に入っているからね。そんなキミの心を射止めたくせに、放置とかあり得ないから。ヤモヤモとか凄かったよ?」

「ヤモヤモちゃんが?」


ヤモヤモちゃんは爬虫類大好きなVTuberで、彼女のオトモなヤモリちゃんを描いたのがきっかけで仲良くしているお人だ。
かく言う私も、爬虫類が大好きなのよね。諸事情により飼育ができない出来るんだけど、いつかお迎えしたいと思っている。