第三章 
十四歳の初夏。俺は初めて恋をした。、、、何て言えば聞こえはいいが、そっからがもう大問題。
いままでは俺が行かなくても、向こうのほうから来てくれてたから、なにも聞かなくても好みとかは大体分かった。
(別に知りたくもなかったけど)
でも、卯月さんについては、何も知らない。むしろそんなにしゃべったこともない。
なんなら、ゼロどころか、マイナスからのスタートといったっていい。
それぐらい、俺と卯月さんの距離は遠いのだ。
「おーい、、、、。おい!話、聞いてる?透夜!」幸也の声でハッとする。
「ああ、ごめんごめん。んで、なんだっけ?」
「だーかーら!お前の好きな奴って、あのー、アイツ。地味でよくわからない、、、ああ!卯月ってやつか。」
ブーーーっ。おもわず飲んでいた、ココナッツハニーラテ(生クリーム&ココナッツトッピング甘さ強め)を吹き出す。
「え!?え!?ええええええ!?幸也、お前なんで知ってンゴッホゴッホ、、、、」
驚きすぎたせいで、トッピングのココナッツが喉で反乱を起こす。
「うわ!まじ!?ビンゴ!?良かったー。いやーやっぱし俺、神だわー笑笑(決めポーズ付き✨)!、、つか、だいじょーぶかー?俺のアーモンドラテいるか?アーモンド、めっちゃトッピングしてるから、うまいぞー!」
「余計に死ぬわ!!!!!馬鹿かおま、、ゴッホゴッホ、、、頼むから水を、、くれ、、、、、」
幸也からもらった水を一気に飲み干し、無事復活できたところで、もとの話に戻す。
「つか、幸也、、、、いつから気づいてたんだ?俺、卯月さんに関しては何も言ってないはずなんだけど、、、?」
「いやーわかるって。最近隙さえあれば卯月?のほう見てたしさー。」
「卯月さんの事、呼び捨てにするな」
「ああ、そうだな。ごめんごめん。(笑)最初はよく卯月の隣にいるまつりさ、、、いや神谷さん見てんのかと思ってちょっと焦ったんだけど、、、」
「え?わりい、神谷の後なんて言った?聞こえなかっ、、」
「いや!まあいいだろ!そんなことは!とにかく、、、、またな!」
俺が呼び止める間もなく幸也は喫茶ローダンセを出て行った。
「そんなこと、、、、ってなんだ???」幸也の言動に?しか浮かばない。
幸也のやつ、いったいどうしたっていうんだ?顔が少し赤かったから、具合でも悪かっ、、、!?
もしかして俺を心配して具合が悪かったのに付き合わせてたのか?!だから、あんなに急いで帰ったのか、、、。
俺っていう奴は、、、、
自分の配慮のたりなさに情けなくなる。
とりあえず幸也に体調気をつけろよという雀のスタンプを送り、ソファに体重をかけてもたれる。
ローダンセのソファは古いせいか少し硬かった。
「こんなんじゃ、卯月さんだって俺のほうなんかみてくれねえよなあ、、、、」
透夜のため息交じりのつぶやきは夕焼けの空に消えていった。

ローダンセの反対側の通りの信号では同じように「不器用バカ男子」幸也が呟く。
「こんなことで照れちゃ、まつりさんだって俺なんかみてくれねえよなあ」
まさか、思いがけず共鳴しているなんてこの二人は思いもしてないだろう。(特に透夜なんかは、、、、)
ふと幸也のスクールバッグの中のスマホが振動し、ポケットを探る。
スマホの画面を見て、幸也は思わず吹き出す。
「なんでそうなるんだよ!?」
幸也のこの声もまた夕焼けの空に消えていった。