「その子は本が好きでね。いつも病院の中庭で本を読んでいた。初めて会った時も、俺の読んでいた本に興味を示して、声をかけてきた」

それから、月島先生が、退院した後も、お見舞いに行って、学校のことを話して聞かせたようだ。

「そして美咲…詩織の妹なんだけど、杉原美咲、文芸部の。そいつとも仲良くなって、凛兄って呼ばれるようになったんだ。学校では呼ばせないようにしてるけど」

月島先生がいつもと違う雰囲気で話しているのが、新鮮だった。

学校の外ではこんな感じなんだ…

「そして、高校一年の雨の日に亡くなった」

「え…」

「もともと長くは持たないと、医者に言われていたみたいだったから、最後に思い出ができてよかったって、詩織が親に話していた。俺のおかげで死ぬ前に、楽しい時間が過ごせたって母親に感謝された。俺も嬉しかったよ」