あー! 思い出してもムカつくだけだけど、『君とは合わない』ってなんなの?
 なんであんな白蛇みたいな男に私がフラれなきゃなんないのよ! こっちから願い下げだわ。
「まあ、子供たちがコナンコナンって言ってたから、観られてよかったけど」
 子供たちとの会話の足しになるからね。
「どうしたの? 飲まないの?」
「……飲む」
 そういって謙吾は生中を一気飲みした。
「ちょ……大丈夫? ペース早いんじゃ」
「すみません! もう一杯」
 どうした? なんだか機嫌が悪い。
 ただでさえ強面で目つきが悪いのに、さらに凶暴で機嫌の悪い熊みたいになっている。
 新規事業でトラブルって言ってたからストレスでもあるのだろう。
 謙吾の実家は六車ホールディングスという、関西では知らない人がいないくらい有名なグループ会社をしている。
 長男はゼネコンを、次男はホテル業を、そして三男の謙吾は人材サービス関係の会社を任されていた。