午後の1番は再び大人のためのプログラムだ。
 借り物競争の列には謙吾の姿が見える。
 この借り物競争は毎年具体的で面白い。例えば『校長先生とダンスを踊りながらゴール』とか『教頭先生と二人三脚でゴール』といった感じ。先生方のおちゃめな姿が見られるので、応援席が盛り上がるプログラムなのだ。
 今年も校長先生が借り出されているなー。
 謙吾はラストか。相変わらず走るのが速く、1番に借り物のメモを開けた謙吾。次の瞬間、目が合った。え……私、睨まれてる? なんだろうと思っていると、私に向かって猛突進してきた。
「わ、天沢先生! あの大きなおじさんこっちに来るよー。怖いー!」
 クラスの女の子たちが熊男の猛突進を怖がっている。本人は真剣なんだろうけど目付きとデカさがね……。
「糸!」
 謙吾が、ひょいっと私を持ち上げた。
「ひゃぁっ」
 何をするんだ!
「わー! 天沢先生お姫様抱っこされてる〜」
 女の子たちがキャーキャー黄色い声を出している。みんな、お姫様抱っこって怖いのよ!? めちゃくちゃ高いの!
 謙吾が私を抱っこしたままゴールを目ざして駆け出した。ひえぇーっ、怖いっ!