「お待たせしたね。謙吾、食べよう?」
 ホテル特製のオムレツは最高に美味しかった。焼きたてのクロワッサンも外はパリッとしていて、中はもっちりふわふわの層がたまらない。
「あ、それと……」
 謙吾が何か言いにくそうにしている。
「今日……この後……」
「なに?」
「その……。……が来るんだ」
「え? なんて?」
 今、なんだかあり得ない言葉を聞いた気がするする。
「だから……親が来る」
「親? 親って謙吾の⁉」
「うちだけじゃなくて、糸のとこも……」
「はい⁉」
 一体どういうことだ。なんでそんなことに⁉
「糸のご両親に挨拶に行こうと思ったんだ。うちの母親なら幼稚園からの知り合いだし、糸のお母さんの連絡先を知っているだろうと思って聞いたら……」
「……ハァ……なんとなく、聞かなくてもわかるわ」
 大体の流れはわかった。元々ママ友として仲が良かった母親同士が盛り上がっちゃったのね。突然降ってわいた息子娘の結婚話に。
「悪い。うちの母親が張り切って、顔合わせの場を……予約したそうだ」
「顔合わせ……」
 幼馴染みって怖い……。展開が早すぎない?