「そういえばここ、どうして2部屋もあるの?」
「それは……糸が嫌がるかと思って」
「……?」
「せっかく元に戻れたのに、同じ部屋だと嫌だろうと思って。ここならシェアハウスみたいだろう?」
「シェアハウス」
 確かにシェアハウスってこんな感じなんだろうけど、ここホテルなのよ? 気遣ってくれたのは嬉しいけれど、あまりにもゴージャスすぎてクラクラするよ……。
「気に入らないか?」
 熊さんがまたシュンとしている。
「いや、そんなことないよ!」
 ダメだダメだ、シュンとさせちゃ。謙吾の気持ちも大切にするって決めたんだから、ここはありがたくこの状況を受け取ろう。ただこれだけは言わないと。
「今度からツーベッドルームもいらないからね。一緒でいいから」
「糸……!」
 謙吾の顔がみるみる明るくなり、シュンとしていた熊が少しはにかんだ笑顔を見せた。