謙吾の様子を見ると、バスローブ姿ではあるが、すでにシャワーをした後のようだ。
 一体何時に起きたのだろう。たしか私たち、明け方近くまで……。
「……シャワー、してくる…………わっ」
「糸!」
 立ち上がろうとしたが、脚ががくがくと震えて力が入らない。私は再びベッドに倒れてしまった。
 謙吾がまた私をひょいっとすくい上げた。
「ひゃっ……何を……」
「歩けないんだろう? バスルームまで運んでやるから」
「……謙吾のせいよ。あんなに……長い時間……。さ、三回も……」
「悪かった。でもやっと糸を手に入れて、我慢できなかったんだ」
 そう言ってお姫様抱っこしている私の頬に頬ずりしてくる。大きな熊に懐かれているみたいだ。
 頬は今日もすべすべしている。きっと私よりずっと早く起きて、また髭を剃ったんだわ。