「私、これでもモテるんだからね! アプリの中でだけど……」
「わかってる」
「イイネもいっぱいついてるのよ!」
「ああ、わかってる」
 ムカつく! 焦りなさいよ! 
「いつでもお嫁に行けるんだから!」
「ああ、糸がその気になったらすぐにでも行ける。でも俺は、俺以外の男と結婚させる気なんてない」
「なっ……」
 何を今さら⁉
 さっきから酔っぱらいのたわごとだとばかりに「わかってる」しか言わなかったのに、突然調子のいいことを!
「糸が好きだ。ずっと好きだった。だからあの日糸を抱いた」
「……っ!」
「ほかの男には渡せない。だから俺と……え? い、糸?」
「……なんでよ! なんで今頃そんなこと言うの? じゃあどうしてあの時後悔してるなんて言ったのよ!」
 突然ブチ切れて、泣きながらテーブル越しに掴みかかった私に、謙吾がだじろいでいる。
 座っていても無駄に高い身長にムカつく。
「だいたい、なんでそんなに背が高いのよ!」
「へ? 背?」
「謙吾のバカ! 大男! 熊男! あんたなんか嫌いよ。私のこと、ヤリ捨てしたくせに!」
「ヤリ捨て⁉ ち、違っ……ちょっ……声が」