私たちはプールサイドの特等席に座った。そこからプールハウスのバーに並んだたくさんのタップが見える。
「うわっ! あれ見て。すごい数のタップだよ!」
「9種類の樽生があるらしい」
「9種類⁉ うわー楽しみ! 全部試せるかしら」
「さすがに全種類は無理じゃないのか?」
「あ! 小さいグラスで飲み比べセットがある!」
 メニュー表には、9種類のグラスが整然と並べられた飲み比べセットの写真があった。
「まずはこれを頼んで、あとは気に入ったものをジョッキで、だね」
 ワクワクが止まらない。
「謙吾、誘ってくれてありがとうね! ここ最高!」
「ああ」
 時々バチっと爆ぜるトーチの火が夜風に揺れる。すっかり暗くなったプールサイドは快適な気温にまで下がっていた。