「ちょっと、どうしたのよその髭面! 熊男みたいじゃない」
「糸……」
「俺も久しぶりに会ってびっくりしたわ。謙吾、お前会社でイエティって呼ばれてんじゃねーの?」
 私の問いかけに、参列していた同級生の西田くんも同調してきた。
「周りはもう見慣れてる。俺は目つきが悪いからよく似合っているそうだ」
「……それ、褒められてないと思うよ?」
「プハッ……だな。お前、今何してるんだっけ?」
「うちのグループの人材サービス会社を任されている。兄貴たちが面倒がってるところを押し付けられた」
「ああ、なるほど……。けど、登録者やクライアントに怖がられないのか?」
 それは私も気になった。
「年齢的に上に見られるみたいだ。その方が都合もいいんだ」
「ふーん。まあたしかに落ち着いて見えるし似合ってなくもない。ワイルドで色気があるともとれるな」
「色気……?」
 謙吾は驚いたような顔をして髭面の顎を触っているが、実は私もそう思った。