謙吾と一夜の過ちをしてしまったあと、私はすぐにメッセージをブロックした。もう二度と謙吾には会いたくないと思ったからだ。
 ちょうど教育実習の準備で忙しく、余計なことを考える暇はなかった。
 謙吾もインターンとしてグループ会社で働き始めたと聞いていたから、きっと忙しくしていたのだろう。

 再会したのはつい最近のこと。今年のお盆休みに聖堂館の同級生同士の結婚式があったのだ。私は新婦に、謙吾は新郎に招待されていた。
 久しぶりに会った謙吾は顔の半分を髭が覆う熊男になっていた。びっくりしたなんてもんじゃない。
 最悪な別れ方をして、こちらからブロックしたのにも関わらず、思わず声をかけてしまった。