そんな時だった。謙吾が一言言ってくれたのは。
「糸は口先だけで自分は何もしない学級委員じゃない。糸が誰よりも働いているのは見ていればわかるだろう? お前らただサボりたいだけじゃないか。恥ずかしいと思わないのか」
 当時、謙吾は小6にしてすでに170㎝を超える身長で、ランドセルを背負っていなければ小学生には見えない体格だった。
 寡黙だが成績は良くスポーツ万能。ただ目つきが鋭く見た目が怖かったのでモテてはいなかったが、周りからは一目置かれていた。
 そんな謙吾の一言は、クラスメイトの心に深く刺さったようだった。それから皆の態度は一変し、クラスの雰囲気もとても良くなったのだ。
 私は謙吾に救われた。謙吾がいなかったら、カドがありまくりの私ではクラスを上手くまとめられず、反感を買う一方だっただろう。
 その後、私はただ正しいことを皆に押しつけるのではなく、言い方を変え、受け入れられるよう努力するようになった。
 そして謙吾に対しては、私を救ってくれた感謝の気持ちと、それ以上の……淡い恋心を抱くようになったのだ。