「【婚活ステーション】っていうの」
「ブフッ!」
 アプリを見るなり吹き出す謙吾。
「ちょっと――汚いなぁ」
 おしぼりで髭面を拭いてやる。
「そ、それ……」
「このアプリ、評価も星4.7だし、口コミもいいのよ。AIが徹底的に自分にあった人を探し出してくれてマッチングだって。二つ上の秋吉先生のおススメで、先生もこの前ついに実際に会ったんですって! すっかり意気投合したみたいなの。すごくない?」
「……」
「なによー。婚活アプリなんて、って思ってる? 就活アプリを生業にしている人が反対するの?」
「い、いや、そうじゃなくて……。突然じゃないか? 糸、今まで仕事の話ばかりで……」
「さすがに30歳が見えてくるとちょっとは考えるようになるよ。あの職場じゃ出会いもないし。お母さんもうるさいしさぁ」
「……」
「よし、ダウンロードしちゃおう。えいっ!」
「あっ」