「先生さようならー」
「さようなら……あ、井田君! 明日は算数の宿題どうするんだった?」
「えっとー、今日の分と、昨日の分どっちもやってくる」
「はいそうです。やってこなかったら運動場10周ね」
「えー⁉ なんでだよー!」
「約束を守れなかったらペナルティは当たり前。大丈夫よ、先生は優しいから一緒に走ってあげる」
 そう言ってにっこり微笑みかける。ひるむ井田君に笑顔で圧力を。
「やるわね?」
「……はい」
「ちゃんときれいな字で書いているかもチェックするから」
「……わかったよ」
「言葉遣い!」
「わ、わわ、わかりました! ちゃんとやってきますっ!」
「はい、よろしい。じゃあ気をつけてねー」
 ランドセルを背負い、猫背になった井田君がすごすごと帰っていく。私よりも高い身長にもかかわらず、随分と小さく見えるな。
 小学校6年生は思春期の入り口。生意気盛りだけれど、まだ先生の言うことをちゃんと聞いてくれる純粋な時期でもある。ちょっとばかし厳しいかもしれないけれど、社会のルールを身につけるためにも規律は守ってもらわなきゃいけない。でもただペナルティを課すわけじゃない。ちゃんと子供達に寄り添う姿勢も見せている。