「美桜…?」


「あ!す、すみません!大丈夫です!」


 私は慌てていおり先輩の腕の中から逃げ出した。


 そんな私をにやにやとした笑みを浮かべて見てくるいおり先輩。


「どうしたの?美桜?もしかして、俺にドキッとしちゃった?」


「違います!」


 実際その通りだったのだけれど、なんだかムキになって返してしまった。


「否定が強いんだよなぁ…。もう少し俺にドキドキしてくれてもいいのに。美桜は難しいな」


 いおり先輩は残念そうに食器の片付けを再開する。


 そんな先輩をよそに、私の心臓はせわしなく動いていた。


 いおり先輩に抱きしめられたり、なでられたりしたことなんて、何度もあるのに。


「なんで……」


 なんでこんなにドキドキしちゃったんだろう…?