「い、いおり先輩、どうでしょうか?」
感想が気になっておずおずと声をかけると、先輩がちょうどかきたまうどんを食べ終えるところだった。
「おいしかった……」
いおり先輩はどんぶりに目を落としながら、そう小さくつぶやいた。
「本当ですか!よかったぁ~」
私はほっと胸をなでおろす。
「ほうれん草入りのかきたまうどん、おいしいですよね!私、小さい頃よく風邪で寝込むことがあって、その度に母が作ってくれたんです。熱が出てしんどくても、母の作ったかきたまうどんが食べられるから、ちょっと楽しみだったりして」
小さい頃のこと、母のことを思い出しながら、私は優しい気持ちになる。
「私、ご飯を食べるのが大好きなんです!おいしいものを食べた時の思い出や、うれしい気持ちも一緒に思い出せるから。私もそういう温かいご飯が作れるようになりたいんです。
いおり先輩はご飯に興味ないって言ってましたけど、少しでも美味しいって思ってもらいたいな、元気になるといいな、って気持ちで作りました!」
体調の悪いいおり先輩が、ご飯を食べて元気になって、ご飯を食べるって楽しいことなんだって思ってくれたらうれしい!
私の言葉を静かに聞いていたいおり先輩は、穏やかに微笑んだ。
「こんなにご飯がおいしいと思えるのは久しぶりだった。うちは両親がいつも忙しくて、一緒にご飯を食べる機会がどんどん減ってしまったんだ。そのうちご飯なんてどうでもいいかな、って思うようになってしまった。わざわざ自分一人のために作るのも面倒だし」
いおり先輩は顔を上げると、私をしっかりと見すえた。