「おー、これが美桜の小さい時の写真かぁ」


 私の幼少期のアルバムを広げながら、いおり先輩は楽しそうな声を上げる。


 相変わらずいおり先輩はよくうちでご飯を食べていて、私はそのご飯を作っている最中のことだった。


 今日の晩ご飯はなににしようかなぁ。


 悩みながらお母さんの本棚に脚を向けて、お母さんが集めた料理本からアイデアをもらおうとページをぱらぱらめくる。


 そこに一緒についてきたいおり先輩は、ひとつの大きなアルバムに目をつけた。


「これなに?」


「あ、それ、私の小さい頃のアルバムです」


「アルバム!見てもいい?」


「いいですけど、そんなに面白くないですよ?」


「面白くなくていいんだよ。ただ俺は、俺の知らない好きな子の小さい頃を知りたいだけ」


「そ、そうですか…」


 さらっと混ぜられた「好きな子」という言葉にドキッとしてしまう。