家庭科室にやってくると、なぜかいおり先輩がそこにいた。


「やあ、美桜」


「いおり先輩…」


「友達とお話できた?」


「………」


 話はできた。けれど、なんの解決にもつながらなかった。


 努力する彩ちゃんを、私は否定してしまったんだ…。


 私が黙っていると、いおり先輩はこちらにやってきて、そっと抱きしめてくれた。


「相変わらずおいしそうな匂いがする…」


 首元にちゅっと音を立ててキスをされて、私は飛びのいた。


「ちょっと!なにするんですか!」


 いおり先輩は平然と答える。


「美桜はいつもおいしそうな匂いがするんだけど、今日はそれに悲しい匂いが混ざってる」


「か、悲しい匂い…?」


「悲しいことがあった?」


 いおり先輩は本当に不思議な人だ。


 どうしてわかっちゃうんだろう…?