「美桜ちゃんはさ、」


「うん?」


「美桜ちゃんは好きな人がいないから、そういうことが言えるんじゃない?」


「え?」


「がんばってご飯抜いて、かわいくなろうって努力する気持ち、美桜ちゃんにわかる?」


 彩ちゃんの言葉に、私はなにも言い返せない。


 たしかにその通りだ。


 大木先輩にかわいいと思ってもらいたい気持ち。


 好きになってもらいたい気持ち。


 私に彩ちゃんの恋する気持ちはわからない。


 だって私は…、恋をしたことがないから…。


 彩ちゃんはハッとしたように布団に潜った。


「変なこと言ってごめん…。少し寝てから帰るね」


「うん…」


 「お大事に…」と小さくつぶやいて、私は保健室を後にした。