「いおり先輩、ご飯食べるの嫌いですか?」


「別に、嫌いというわけじゃないけど。まぁ、あまり好きとも言えないかな」


 いおり先輩がはじめて表情を変えた気がする。


 今まではひょうひょうとして、穏やかに笑っているマイペースな感じだったけれど、ご飯の話になるとなんだか悲しそうな、なにかから目を背けるような、そんなさびしい表情。


 ご飯がさびしいものじゃ絶対だめだよ!


 私はキッチンにやってくると、制服の上にエプロンを付けて、きれいに手を洗った。


 いおり先輩はふらふらとした足取りでこちらにやってくる。


「美桜、なにするの?」


「言ったじゃないですか、いおり先輩に美味しいご飯を作るんです」


 いおり先輩は少し困ったような顔をしたけれど、なにも言わず私の行動を見守ることにしたみたいだった。


 さて、なにを作ろうかな…。


 冷蔵庫を開けて、中にある食材を確認する。


 冷蔵庫の中にはたくさんの食材が入っていた。


 この前スーパーの特売で買いだめしたのだ。


 いおり先輩は鉄分不足。それでいて、いつちゃんとご飯を食べたのか分からないから、急にいっぱい食べたら胃がびっくりしちゃうよね。


 鉄分がとれて、お腹に優しいもの……。


 うん、よし!これにしよう!!


 メニューの決まった私は、さっそく調理に取りかかる。