視線を外した私の頬に、いおり先輩の指先が触れる。


 驚いて先輩の方を向いてしまった。


「な、なんですか…」


 なぜだか語尾が尻つぼみになってしまう。


「おいしそうだなって」


「へ…?」


「美桜の頬っぺた。柔らかくておいしそう…その唇も」


 急に全身が熱くなって、頬に熱がこもるのを感じた。


「ま、また!そうやってすぐ私のこと食べようとする!」


「だって、おいしそうだから」


「食べないでくださいっ」


 すねたように私の頬から手を離すいおり先輩。


 なぜだか心臓がうるさい。


 なんでこんなにドキドキしているんだろう…?


 いままでいおり先輩といても、なんともなかったのに…。


 私は自分を落ち着かせるように、大きく息を吸った。


「で、なんで急にそんな話を持ち出してきたの?」


「へっ!?」