「美桜ちゃん!ちがうの」
「ちがう?」
「この好きはね、恋愛感情の好きなの…」
「恋愛…感情…」
「私、大木先輩のこと、アイドルとか推しみたいな感覚で好きだと思ってたんだ。でもね、ちがったの」
彩ちゃんは胸元に手を当てて、ぎゅっとに握りしめる。
「この前直接大木先輩と話す機会があって、私、この先輩のこと好きだなぁ、もっとおしゃべりしたいなぁ、近くにいたいなぁ、って思ったの」
私はだまってうなずきながら、彩ちゃんの言葉を待つ。
「そこでようやく気がついた。私、大木先輩と付き合いたい、彼女になりたいんだって」
「彼女……」
彩ちゃんはうれしそうでいて、でも少し困ったような表情を浮かべていた。
「ねえ、美桜ちゃん!美桜ちゃんもこんな気持ちになったことない?」
「えっ!」
「美桜ちゃんは、私の恋する気持ち、わかるかな…?」
彩ちゃんとの話しは、そこまでになってしまった。
ちょうどバレーボールの試合が終わってしまって、私たちのチームの番になってしまったから。
親友の彩ちゃんが打ち明けてくれた、恋する気持ち。
それってどんな気持ちなんだろう…?
私は、初恋もまだだった。