一葉くんがなにに怒っているのかは分からない。


 でもきっと私がなにかしちゃったんだよね?優しい一葉くんが怒るなんてよっぽどのことだ。


 一葉くんは浅くため息をついた。


「美桜、俺こそごめん」


「へ……?」


「別に美桜がなにかしたとか、そういうんじゃない」


「え、そうなの…?」


「ただ……」


 一葉くんはそこで言葉をきると、言いづらそうに視線を外した。


「ただ、中学になってから、美桜と一緒にいるとからかわれるようになったんだ」


「え…?」


「付き合ってるだのいちゃついてるだの、男子からうるさく言われるんだ。だから…」


「だから、私を避けるようになったの…?」


 一葉くんは小さくうなずく。


「美桜が謝る必要なんてない。悪かったのは俺なんだから。本当にごめん…」


「そ、そうだったんだ…」