「で、美桜はなにに悩んでいるのかな?」
「あ。えっと…」
「一葉くんのこと?」
すばり言い当てられ、私はしぶしぶうなずいた。
「一葉くんとは、実はここのところ疎遠になってしまっていたというか…。この前、久々にうちに来てくれたんです。だけどやっぱり一葉くんは私に怒っているみたいで…。謝りたいけど、なかなかタイミングもないんですよね…」
「なるほど」
「一葉くん、なにを怒っているんだろう…?」
「んー怒ってる、というわけではない気もするけど」
「え?」
いおり先輩の発言が気になって聞き返そうとしていると、コンコン、と家庭科室の扉がノックされた。
「あ!はい!」
私は立ち上がって返事をする。
するとガラリと音を立てて扉がスライドして、一人の男子生徒が入ってきた。
ネクタイの色が私やいおり先輩と違うので、きっと一年生だ。
一年生の男子生徒は、おずおずと口を開く。