「はぁ……」


 私は家庭科室の机に頬づえをついて、深いため息をこぼした。


 一葉(いつは)くんがうちに来て数日。


 結局あれから話すタイミングがないままだった。


 一葉くんはやっぱりなにかに怒っていて、きっとその原因は私なのだ。


「はあーもうどうしたらいいのかなぁー」


「俺で良ければ、力を貸そうか?」


 ひょいっと現れたいおり先輩に、私は大げさなまでに悲鳴を上げた。


「ぎゃあああっ!?いおり先輩!?!どこから現れたんですかっ」


「驚きすぎじゃない?」


「いおり先輩がびっくりさせるから!!」


 いおり先輩は私の向かいの椅子を引いて、のんびりと座った。


 いおり先輩とこうして学校で話すのははじめてだった。


 先輩、ちゃんと学校来てたんだ…。


 そんな当たり前のことに感心してしまう。