玄関の開く音に私と同じように顔を上げたいおり先輩。


「お姉さん、帰ってきたの?」


「そうみたい」


 そんな会話をしていると、足音がリビングへとやってくる。


「あ、おか、」


 おかえり、そう言おうとして、リビングに顔を出した人物に驚いて声を上げる。


「あれ!?一葉(いつは)くん!?」


 そこに立っていたのは、私たちと同じ制服を着た男子生徒。


 幼なじみの椿原 一葉(つばきはら いつは)くんだった。



 一葉くんとは小さい頃からの幼なじみ。


 家が隣で、小さい頃はいつも一緒だった。


 それが変わってしまったのは、私たちが中学校に上がった頃。


 それまで毎日のように登下校を一緒にしていたのに、一葉くんが急にひとりで行くと言い出した。


 私は一葉くんになにか嫌なことをしてしまったのかなと、謝る機会もないまま、なるべく話しかけないようにしていた。


 二年生になってまた同じクラスになったけれど、やっぱり一葉くんとは話せないままだった。