「はー、楽しかったですねぇ…」


「そうだね」


 いおり先輩とふたりの帰り道。


 私はさっきまでの楽しくにぎやかな時間の余韻に浸っていた。


「みんなおいしいって言ってくれて、うれしかったです!」


「美桜の料理はおいしいからね」


「えへへ」


 褒められてついつい頬がゆるんでしまう。


「あ、美桜、ここ、覚えてる?」


「え?ここ?ここってたしか…」


「そう、俺が行き倒れてたところ」


 あの日、私がはじめていおり先輩に出会った場所。


「ほんと、びっくりしましたよ!人が倒れているところなんて、はじめて見ちゃいました」


「あはは、びっくりだよねぇ」


「笑いごとじゃないですっ」


「あの日美桜に助けられてから、俺、ずっと幸せなんだ」


「え…?」


 いおり先輩が急に真面目に話し出すものだから、私はいおり先輩の顔をまじまじとみてしまった。