「チョコと抹茶も作っちゃお~」


 今日は私の大好きな味をたくさん作るんだ!


 次々とふくらんでいくカップケーキをながめていると、ガラっと家庭科室にだれかがやってきた。


「よお」


「あ、一葉くん!」


 ジャージ姿で軽く手を挙げながら入ってきたのは、幼なじみの一葉くん。


「なんかうまそうな匂いがしたから」


「ふふん!今日はカップケーキを焼いているのです!」


「俺ももらってもいい?」


「もちろん!」


 渋々いおり先輩のとなりに座った一葉くんに、いおり先輩はにこやかに話しかける。


「やあ、一葉くん。元気?」


 一葉くんは相変わらずめんどうくさそうにいおり先輩に返答する。


「お前はいつも通り元気そうだな、藤ヶ谷 庵」


「まあね、毎日美桜のご飯食べてるからね」


「いつまで美桜に引っ付いてるつもりだ?」


「いつまでって…、…一生?」


「はぁ??」


 ふたりが言い合っているところへ、またお客さんがやってきた。